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台北でブーム、サイクリングの魅力を探る!
文/岸田英明  
自転車産業の世界的集積地、進む専用道路の整備、自転車ロードムービーがヒット ―― “サイクリングアイランド台湾”の中でも特に愛好者の多い台北郊外の淡水を走り、自転車の魅力を全身で感じた。



今、サイクリングが台湾の都市生活者に欠かせないレジャーとなっている。週末ともなると、公園や河川敷、幹線道路やMRT(=新交通システム)の中など街のあちこちで、「GIANT」や「MERIDA」など台湾を代表するメーカーのロゴが光る自転車を見かける。「台湾一周」、「市長と走ろう」など様々なテーマのイベントが各地で催され、数千人を集めることも。さらに、書店には自転車旅行記やガイドブックが並び、「単車上路(邦題:自転車で行こう!)」(2006年)や「練習曲」(2007年)といったサイクリング・ロードムービーがヒットするなど、裾野の広いブームとなっている。
近年、台北県市の河川敷を中心に自転車道の整備が進み、2005年春には台北市内の自転車道の総延長が100kmに達した。中でも、歳末市で有名な迪化街近くの大稻埕埠頭から社子を経て淡水河と基隆河の合流地点に至る約12キロの淡水河右岸自転車道や、淡水河下流の関渡から淡水老街(古い街並みを残す商店街)へ至る自転車道はいち早く整備され、現在も多くの市民に利用されている。今回はこの内、関渡~淡水漁人埠頭のコースを紹介する。


「フル装備」でサイクリング
春先の週末の昼下がり。台北市内からMRTに乗り、終点の淡水駅に着く。立っているだけで汗ばむ陽気で、この季節の台湾には珍しく、雲一つない青空が広がっていた。観光案内所で周辺地図を受け取り、駅前のレンタルサイクル店へ。自転車は6段変速のスポーツタイプで3時間200元、余分な荷物は店で預かってもらった。


潮風を受け夕焼けの待つ埠頭へ
河岸へ向かって自転車をこぎ出すと、古びた漁船が浮かぶ淡水河の先に対岸八里の観音山がくっきりと見える。波間にきらめく陽光がまぶしく、思わず目を細める。標識に従って自転車道に入り、南の関渡へ向けてMRTの線路と平行しながら走った。
自転車道では様々な人たちがサイクリングを楽しんでいた。「協力車」(二人乗り自転車)のカップル、サドルの前後の補助席に小さな子供を2人乗せた外国人の父親、汗をぬぐいながらゆっくりペダルを踏む中年女性、ハイスピードで颯爽と駆け抜けていく青年…。台湾ではちょっとしたサイクリングでも、ヘルメットやグローブ、タイトパンツなど「フル装備」で臨む愛好者が多いことに気が付く。立ち話をした台北市内の20代の会社員女性は「奮発して買った自転車に合わせたら、自然とこの装備になった」と笑った。
淡水駅隣の紅樹林駅を過ぎると、すぐ右手に広大なマングローブが広がる。メヒルギの純林としては世界最大級約70haの保護林。自転車2台がやっとすれ違えるほどの幅の木製の道が続き、継目にタイヤがかかる度に軽い振動が伝わってくる。この日はゴイサギやアマサギなどの水鳥のほか、泥土に穴を掘って暮らす大小様々なシオマネキを見かけた。
前方に関渡大橋が見えてきたところでUターンし、川の方向へ向かって折れる自転車道へ入る。左手には豊かな水量を湛える淡水河と紺碧の空、右手には黄金色のススキの群生地が続く水際の道を北へ向かって走り、出発から約1時間で淡水駅まで戻った。


阿給と潮風と「初めての風景」
淡水老街で名物の「阿給」(ビーフンを油揚げで包んで蒸し、甘辛いソースをかけた惣菜)と「魚丸湯」(ツミレ入りスープ)を小腹に入れた後、北へ針路を採る。観光客で賑わう川沿いの商店街を抜け、淡水の大動脈である中正路へ。今回は一路漁人埠頭を目指したが、馬偕街(マカイ通り)を経由して、淡水高校(カナダ人のマカイ牧師が1883年に開いた台湾最古の女性教育機関の後身)や清朝時代の関税総司令邸宅、紅毛城(17世紀にスペイン人が建設し、後にオランダ人によって再建された現存する台湾最古の建築物)などの史跡を巡るのもいいだろう。潮の香りが次第に濃くなっていくのを感じながら15分ほど中正路を走ると、右手に海が見えてくる。道路脇の見晴台から砂浜へ降り、呼吸を整えていると、近くの乗馬クラブの黒毛馬が二頭、男性を乗せて波打ち際を駆けて行った。さらに5分程で埠頭に到着。海岸線に沿って遊歩道が整備されており、東シナ海に太陽が沈むのを待つカップルや家族連れが、潮風に髪を乱されながら笑顔を交わしていた。
「健康」や「エコ」だけでなく、行動範囲が限られる徒歩や点と点とを結ぶ電車やバスの旅と比べ、短時間で土地の様々な表情を見られることも、自転車が人々をひきつける理由なのだろう。
淡水への小旅行は初めてではなかったが、今回は多くの「初めての風景」に出会えた。
何度も訪れた淡水で、たくさんの「初めての風景」に出会えた。