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玉山   東北アジアの最高峰
時代や民族の違いを超えて崇められる聖なる山の魅力を紹介する。

文/阿部由理香       

真来珠湾攻撃の暗号だった「ニイタカヤマノボレ」。戦前の台湾は日本統治下にあり、富士山より高い「新しい日本の最高峰」であるとして、「新高山(ニイタカヤマ)」と名づけられた。

 



パットンカン、新高山、 そして玉山
玉山は台湾中央山脈の頂にあたり、標高は3,952メートル。豊かな自然と勇壮な風景を持ち、台湾先住民に「聖なる山」として崇められている。早くも1934年には新高阿里山国立公園に指定されており、戦前から登山家たちにとって憧れの山であった。戦後は玉山国家公園となり、民衆の間に観光登山が広まっていった。今では日本からも多くの登山客が訪れる。

玉山は、「新高山」以前にも様々な呼び名があった。山頂の雪の輝きから、台湾先住民族の鄒(ツォウ)族は「パットンカン(pattonkan、光る山/石英)」と呼んだ。また、清朝時代の文献には「八通関山(パットンカンの音訳)」の名も見られる。また、欧米では、この山の報告をした商船主モリソンに因み「モリソン山」とも呼ばれた。このように、玉山は、台湾の歴史と共にいくつもの名をもつ。

 



自然、文化、歴史 の宝庫
玉山は、1985年に国家公園に指定され、景観や生態系、史跡が保全されており、台湾の人々に憩いの場を提供している。過去には、軍事的な理由から一般人の入山は厳しく制限、管理されていたが、現在は、生態保護の観点から入山許可を必要とするエリア以外は自由に観光できる。

かつて、玉山への道は、清朝統治時代に開かれた古道と、日本統治時代に作られた狭隘な山道である八通関越横断道路のみであったが、1991年に新中部横貫公路が完成し、交通の便は飛躍的によくなった。玉山を訪れる観光客にとっては、山頂を征服する達成感もさることながら、季節ごとに千変万化する山岳風景も大きな魅力だ。海抜が上がるにつれて、気候が変わり、植生も変化する。春には高山植物が、秋には紅葉が、訪れる人の目を楽しませてくれる。約3,000mにある塔塔加(タタカ)ツーリストセンターからは、雄大な山岳パノラマや眼下に広がる幻想的な雲海が楽しめる。レストランや展示施設、遊歩道も整備されており、多くの旅客が玉山観光のベースとして利用している。